年の瀬も押し迫った12月28日、「おそらくこれが年内最後の真鶴になるだろう」と思いながら、真鶴駅に降り立った。 思い返せば、今年は真鶴町にどっぷりと浸った1年だった。いや、もう少し長く浸っているだろうか……
というのも、前年の貴船祭が終わって一段落した10月頃から、櫂伝馬(かいでんま)を漕ぐ練習に隔週で参加させてもらっていたからだ。伝統ある祭のほんの一部分ではあるが、それを体験させてくれる町の懐の深さに、深く感銘を受けた。
年明けの「どんど焼き」に始まり、今年復活したという3月の「源頼朝旗挙祭」にも足を運んだ。暖かくなるにつれ私の動きも活発になったが、年に一度の「貴船祭」の準備も、同じようにエンジンがかかり始める。 街角に鮮やかな赤色のポスターが貼り出され、沿道に提灯が並ぶと、町は少しずつ活気を帯びてくる。その間、私は小早船(こばやぶね)の組み立てや装飾、花山車の飾り付けにも参加させてもらい、祭り本番も含めると、気づけば6月、7月はほぼ毎週のように通い詰めていた。
真鶴で出会う方々は皆優しく、貴船祭にかける想いは尊く、そして力強い。 祭りが終わった翌朝、皆で後片付けをしながら、最高潮が過ぎ去ったあとの寂しさがじわじわと溢れてきたのを覚えている。今は、来年の祭を楽しみに待つ心持ちを、この寂しさ以上にして待つことにしている。
祭の後も足繁く通った。祭の懇親会から、小早船の提灯片付け、秋には、まちづくりを学ぶ明治大学とノルウェー科学技術大学の学生たち、そしてまちの皆さんと、惜しまれながら閉店された「斎藤精肉店」の大掃除にも参加してきた。
ここはまちの空き家・空き店舗の現状を踏まえ、地域に再び開かれた場所となるよう少しずつ修繕されていく予定だという。真鶴だけに限った話ではないが、過疎化が進む町の課題を皆で考える機会と題材があることが、私をこの場所へ惹きつける大きな魅力となっているのは確かだ。まちの皆さんはもちろん、まちを訪れる様々な人たちの拠り所として再生されることを切に願う。
そんなこんなで、今年一年を締めくくる最後の真鶴。12月とは思えないほどの陽気の中、何度も歩いた町特有の細い路地「背戸道(せとみち)」を、改めて新鮮な気持ちで写真を撮りながら歩く。歩きながら思い返すのは、この一年で出会った人々の顔・顔・顔。外から来た私を、当たり前のように迎え入れてくれた真鶴の懐の深さ。 その温かさに支えられた一年だった。
途中、西の道祖神(どうそじん)に正月飾りが供えらられているのを見つけた。新しく飾られた正月飾りは、次の始まりの合図のようだった。 来年はどんな真鶴に出会えるだろうか。そんな期待を胸に、私は家路についた。


